ひとりの少女の質問から
2004年12月26日,インドネシアのスマトラ沖で発生した大規模地震は、震源地周辺だけでなく、広範囲な地域に甚大な被害をもたらました。当時、早稲田大学社会環境工学科の教授であった濱田政則氏(現アジア防災センター長)は、震災後現地を視察した際、一人の少女から次のような質問を受けました。

日本は昔から地震の被害を受けていたのに、なぜその経験を私達に伝えてくれなかったの
この質問を投げかけられた濱田教授は、若年層の防災教育の必要性を強く認識し,インドネシアのバンダ・アチェの学校(主に小学校~高校)を回りながら子供達に防災教育を行ってきました。
現地では十分な教材もなく防災教育がほとんど行われていないのが現状で、自然災害に対する知識と正しい理解が不足しているため過剰な恐怖感や災害の不安解消に対する支障となっていました。
濱田教授からこのお話を聞き、早稲田大学の学生を中心とする約40名の有志が集まりました。自然災害で被害を受けた子供たちに何かできることはないかと考え,現地で直接的に防災教育を行う「早大防災教育支援会WASEND」を設立しました。
※濱田教授:現アジア防災センター長。早稲田大学創造理工学部社会環境工学科教授(当時)。工学博士。第94代土木学会会長などを歴任。専門は地震防災工学。
WASENDの設立
5月下旬、インドネシアのバンダ・アチェの子どもたちへ防災教育を届けたいという想いから、約40名の有志が集まり「WASEND」を設立しました。
夏の長期休暇での派遣を目指し、小学生・中学生・高校生それぞれの発達段階に応じた3つのチームを結成しました。毎週水曜日には全体ミーティングを重ね、進捗確認だけでなく、地震・津波のメカニズム、現地の文化やインドネシア語の学習に励みました。多忙な合間を縫いながらも、毎回25名近くのメンバーが集まり、熱心に議論を深めていきました。
6月には、同時期に現地活動を予定していた「京大防災教育の会」との協力体制を構築。情報共有や連携を通じて、より質の高い教育活動の基盤を整えることができました。また、教材開発にあたっては危機管理アドバイザーの国崎信江氏から専門的な助言をいただいたほか、現地留学生によるインドネシア語の発音指導を受けるなど、言葉の壁を越えて視覚的・直感的に伝わる教材の工夫を追求しました。
8月に入り、安全面や資金面を熟慮した結果、各チーム4名・計12名の現地派遣メンバーを決定しました。全員での渡航は叶いませんでしたが、残るメンバーも熱意を絶やすことなく教材制作や予行演習を支え続けました。仲間全員の熱意と多くの支えを胸に、WASENDはバンダ・アチェの地へ向けた記念すべき第一歩を踏み出しました。
